《第15話》 忙しさの裏で、家族の距離が少しずつ変わっていった。そして、電報が届いた

《第15話》 忙しさの裏で、家族の距離が少しずつ変わっていった。そして、電報が届いた

旅館とレストランが回り、
売上が伸び、
人の出入りが増えるにつれて、
家の中の時間は、少しずつ変わっていきました。

忙しさは活気でもありましたが、
同時に、
家族が揃う時間を静かに削っていく。

食卓に全員が揃うことは減り、
会話は、
要件だけになっていく。

誰かが悪いわけではありません。
ただ、
止まらなかった。

商売が順調な時ほど、
止まる理由はない。
その前提が、
家の中にも浸透していました。

私は高校を卒業し、
大学へ進学しました。

家を離れ、
外から実家を見るようになっても、
状況は大きく変わらないように見えていました。

父は相変わらず忙しく、
町のことを考え、
人をまとめ、
動き続けていた。

あの人は、
そういう人でした。

ある日、
電報が届きました。

それを見た瞬間、
私は思いました。

祖父だろう。

年齢のこともあり、
もし何かあるとすれば、
祖父だと思った。

父ではない。
父のはずがない。

そう、
疑いもしませんでした。

病院へ向かう途中も、
現実感はありません。

何かの手違いだ。
きっと、そうだ。

そう思ったまま、
病院に入りました。

そこで、
父の顔を見ました。

その瞬間、
足から力が抜けました。

言葉は出ず、
頭も回らず、
ただ、
その場に崩れ落ちた。

電報の文字が、
ようやく現実になる。

あれほど大きかった背中が、
突然、
そこに横たわっている。

親分肌で、
町の中心にいて、
止まらなかった人。

その人が、
もう動かない。

人目を憚らず泣いたのはこの時が最初で最後でした。

その日を境に、
家の中の空気は、
明らかに変わりました。

忙しさで保たれていた均衡が、
静かに、
しかし確実に崩れ始める。

私はまだ若く、
何を引き受けるべきなのかも、
何が終わったのかも、
分かっていませんでした。

ただ、
一つだけはっきりしていた。

父の時代が、終わった。

わずか18年しか一緒にいれなかった。

そして、
次に動く人間が、
必要になるということだけは。

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